それと同時に、その若君方がこのように趣深い文を託される方は、どのような方なのだろうかと思われてまいりますと、卑しき心の由(よし)ではございませんが、朝露の胸も高鳴るのでした。

すっかりと緊張いたしてまいります朝露には、大門をまもる舎人の、

「おい」

という太い声の呼びかけも、気づけるものではなくて、しばし、お役目も忘れて呆然といたして、お屋敷を眺めているのでした。