さて、その、朝露のお見上げ申し上げる車のうちにては、お暇紛らわしにと、ご兄弟君お二人が、碁盤を挟まれて、相対していらっしゃるのでした。

どちらにも、優劣のつかずと見えます盤の上には、白黒の模様も美しくおり出されて、

「如何なさいましたか、お次は兄上の番ですよ」

と、二の君が余裕の含みにおっしゃいますのを、一の君も、負けていらっしゃるお方ではなくて、石の音も清く高くに、白の光を一点に打ち付けられるのでした。