「僕にしっかりつかまっていてください」


その声と共に一際高く鳴るエンジン音。
そして私は彼と共に何処かへ出発した。


彼の……いつも見ているはずなのに、いつもより凛々しく見える大きな背中にしがみつきながら……。

そんないつもと違う彼に対し、自分でも鼓動が脈打つのが分かる程ドキドキしている。私の心臓の鼓動が聞こえるか心配になる。
そのせいかいつもなら簡単に出る言葉が出ない。


そして彼はというと運転に集中してるせいか私に何も話し掛けない。

そんな気まずくも暖かい不思議な時間が流れる。


「着きましたよ」


エンジンの止まる音に続きふりむきなが私に言う彼。
そんな彼の格好よさにドキッとする。

「どうしたんですか?」

未だに彼から目線を離せないでいると、尋ねるように言う。

いつもと同じ台詞を同じように言っているのに、いつもとは違って格好よく見える彼。

「べ……別に……」


なぜかいつもある余裕がなくなってしまう。

それが少し気恥ずかしくて、目線を反らしながらまわりの景色を見渡す。
するとそこは丘の上……とても雪が降る中それを彩りを加えるように散る星々。


「ここはクリスマスの夜あの一際大きい星に願い事を祈ると叶うと伝説になっているところなんですよ」


目の前に見える星を指しながら言う彼。


「願い事が叶う」
「えぇ、伝説なので確証はないですが……それでも……僕は毎年こうして祈りにくるのです」


それはクリスマスの奇跡なのか、雪とともに夜空に輝く星々といつもより数倍格好よく見える貴方と共に過ごすロマンチックな一時……。

本当は平和を祈るべきだけど、どうしても今日はこの一時が長く続くようにしか願いが思い浮かばなかった。




END