店を出て、あたし達は最寄りの駅に向かった。


運が悪い事に、またもサラリーマンの帰宅時間と重なり、電車の中はすし詰め状態だった。


「銀……ありがとね」


「どういたしまして」


よれよれになりながら電車を降り、あたしは銀にお礼を言った。


あたしのスペースを必死で確保していたため、銀の腕には相当な負担がかかっていたに違いない。


でも銀は疲れた様子を一切見せず軽い足取りで駅の階段を下りて行った。


「もう、19時半か……」


「何か用あったの?」


「いや、何もない」


「もし用があるなら、あたし一人で帰れるから大丈夫だよ?ここから家まで近いし……」


あたしを家まで送り届けた後、銀は再び混雑する電車に乗り家まで帰らなくてはならない。


本当はもっと一緒にいたいんだけどしょうがないよね。


すると銀は首を横に振った後、優しく微笑んだ。


「ちゃんと家まで送り届けないと、心配で寝れないから」


「……へ?」


首を傾げるあたしに、銀は「何でもない」と付け加え再び優しい笑顔をあたしに向けた。