「………ぁあ゛?」



彼の薄い唇が、妖艶なまでに美しい弧を描き。



そっと、死のカウントダウンを始めた。



「さん」


アスファルトに腰を下ろしたままで。



「てめぇふざけてんじゃねぇぞ!」



振り上げられたナイフを紙一重で避ける。

挑発、だ。



「……にぃ」



口角が、吊り上がっている。


目は細まり、幼さが残っていないとはいえ、整いすぎた容姿はまるで凄艶な花だ。


男にそんな単語は似合わない。しかし彼にはそんな常識は当て嵌まらない。


かちゃり、
ベルトのサックに差したダガーナイフを、そっと抜き放つ。


しかしまだアスファルトに座り込んだままの姿勢であり、すぐに戦いに臨めるような格好では無かった。


「………いち」