『人を殺すことは悪いことだ』
蘇る声の主はもう居ない



『……何かを守るための犠牲。この世は綺麗事だけで成り立っている訳じゃないから、死んでいく、殺されていく人間だっている』



自分を守るために戦う。


誰かを守るために戦う。


…殺戮を行うことじゃない。



『だから。お前も、何かを守れよ。そうだな…いつか廃墟を出たら彼女なんか作って、自分なんて惜しくないくらい守ってみる、とかな』



結局、居は廃墟から移したことが無い。


『俺は…―』



このダガーナイフを、何のために振るうのか。



殺すため。


生きるため。




それだけでしかない。



紅蓮は何を守った?



何のために武器を取った?



そんなこと、分かりきっている。



《俺》だ。




呟く。


紅蓮、と。