いつもと変わらぬ日常。
下らない話をして、ダガーの使い方を習って。


ダガーナイフだけは、紅蓮に勝てるようになった、そんな時期だったと思う。



『誰だ?』



紅蓮のものではない気配を感じた。紅蓮が背後の闇に問う。



…パーカーのフードを目深に被った、自分と同じくらいの年頃の少年。



『………………』




―まどろんでいた自分には、その声は聞こえなかったが、ゆっくりと見開かれてゆく紅蓮の瞳に、一瞬で異常性を感じた。



『どうして』



『…お前を殺そうと思って』



『だからそれがどうしてか聞いている』



『……愚問だ。そんなことを言っている暇があったらナイフか銃を今すぐ取れ。…お前も分かっている筈だ』



『…………ッ』