切り傷、火傷、痣。



彼の肌は、それらが極端に多かった。



折檻の痕。



それだけではなかった。



『…っ、ひで…』



思わず、紅蓮にもそう呟かれた程で。



だから、生きることが、そんなことだと、この少年は絶望していたのだ。


だから、この少年は親を自分の手で殺したのだ。



だから、この少年の感情は…まるで凍っているのだ。



『……苗字。考えたのか』



紫苑は手当を施されたあと、上着を羽織りながら口を開いた。


彼から言葉を発したのはこれが初めてだった。だから紅蓮は、思わず笑う。


『……何だよ』


『いや。何か弟って可愛いな、って……っと!』


やせ細った腕から放たれる拳を受け止めて、紅蓮は、はは、と笑った。