お母さんが高卒だったのは知ってる。
でも、そんな理由があったなんて……全然知らなかった。
カラカラに乾いたノドを潤す為に流し込んだ冷めたコーヒーは苦味を増して体に染み渡る。
「戸川だったからだな……」
「え?」
岡田がこっちに戻ってきてわたしの前に座った。
「オレがこの学校に赴任してもう7年になる。5年くらい前からかな。この時期になると、必ずオレのとこに来る生徒がいるんだ」
テーブルの上に散らばっているチョコレートを岡田が手に取る。
「戸川と同じでさ、ゆずがオレに許可取ってるからサボっていいっていってるんだけど、何でわたしはダメなの? って……」

