「君、名前は?」 「あ、戸川春香……」 「春ちゃん……オレは譲。ゆずって呼んで?」 口角を上げてニコッと笑う顔が嫌だとは言えない。 「はい、練習」 「は?」 「ゆず!」 そう言いながらゆずくんの顔が近づく。 「ちょっ……」 わたしはゆずの両肩を掴んで距離をとる。 不覚ながらにもドクンと心臓が飛び跳ねたことは内緒。