「春、思い出した?」 そう、低い声で言われてわたしは思わず由梨の腕をつかんだ。 自然と一歩下がって由梨の後ろに身を隠した。 「春? どうしたの?」 不思議そうな由梨の顔。 「春、何か、怯えてねー? 咲来は食ってかからねーから大丈夫だよ!」 そんな史哉の冗談もスルリと耳から抜ける。