時折吹く春の風が校舎の隣にある桜を運ぶ。
桜の花びらがわたしとゆずの間に1枚落ちた。
「キレイ……」
「春ちゃんは桜が好きなんだ?」
「うん、好き……かな」
何がと聞かれると答えられないけど……和風で日本っぽくて好き。
春らしさも兼ねてるから余計に好き。
「桜はさ……一週間しか咲かなくて命はかないんだよ。風が吹けばこうやって花びらだって落ちる。
落ちた後はみんなに踏まれて何もなかったかのように終わる。花びらが散り落ちた木もみすぼらしい」
「そうかな?」
ゆずがあまりにも悲しそうな顔をしていたからか、わたしはゆずの言葉を否定した。

