「ただいまー」


誰もいない部屋に向かっていつものように、声を掛ける。

家に帰ると、あたしはいつも決まったリズムで動くんだ。

洗面所で手を洗って、うがいをして、顔を洗ってから今度は、コーヒーを入れるためのお茶を沸かす。


――――と、ここまではいつもと一緒。


だけど、今日は違った。


ピンポーン、ピンポーン…。

鳴り響く、インターホンの音。

「誰だろー?珍しいな」


最近の日本は、ご近所どうしの関係が希薄だと言われているけれど。

まさに、このマンションの住人の関係はそんな感じで、あたしに関してはお隣さんの顔さえしらない。


そんな、あたしの住む302号室に来るお客さんはめったにいない。


不思議に思いながら、ドアを開くと――。