『そだ、困るでしょ。これ持ってきなよ』
そう言って差し出されたのは
ビニール傘。
思わず、一瞬思考停止。
なんで傘…?
なんて、疑問が頭を過ぎったけど。
外を見れば一目瞭然だ。
さっきから降り続ける強めの雨。
なのに、あたしは今日傘を忘れてしまった。
まさか、傘持ってないのに気付いてくれたのかな?
『え、でも……』
困る事は確かだけど、仮にも初めて会った人。
借りるなんて出来るわけがない。
だけど。
『俺、もう一本持ってるから安心して』
『………っ』
断ろうとしたあたしの手の平の中に、なかば強引に渡された、ビニール傘。
