ラブ・ウイルス




一瞬、あたしの周りだけが静まり返ったような感覚に堕ちた。
さっきまでの、やんちゃな笑顔とは正反対の冷たい言葉、表情に。


――ドクン。
心臓が大きく波打つ。

もしかしたら、過去に何かあったのかもしれない。

一瞬、そんな推測が頭を過ぎったけど、直ぐさま取り消した。


初対面の人だよ、あたしには関係ないことだ。

そう必死で自分に言い聞かせてみても。

――…なんでだろう。

今日初めて会った人。

痴漢から守ってくれただけなのに。

あたしは、この人の事が気になってしかたないんだ。


だけど、勇気がないあたしは話し掛けることが出来ずにいた。

二人の間に流れる沈黙……。


痺れを切らしたのは、彼。