バス停から“紅葉館”近くのバス停まで1時間。そこから、目的地まで歩くこと20分。そこに“紅葉館”はある。
…が・今はその道程の最中である。
ようやく、バスから降りれたと思ったらここからさらに歩かなくちゃならない。
歩くのでさえ、こんなに苦痛なのにさらに嫌なことは…

「…で、アタシがその高校を受験しようかな〜って父に言ったら、ふざけんなぁ!!って怒鳴られちゃって…」

なんでこの女の身の上話を聞かなきゃならねぇんだ?

バスで出会ってから、目的地が同じだとわかった途端、カヤの若松に対する猛攻撃(つまり質問攻め)は止まらなかった。
ようやくバスから降りたかと思うと、今度は身の上話を永遠と聞かされた。
唯一の救いは、彼女が気を効かせて若松とある程度距離を置いててくれたことである。

もっと気を効かせて黙っててはくれないものか…

口から大きなため息がもれた。