「郁」 隣のおっちゃんが、やって来て。 源五郎の首輪に、紐をつないだ。 そして、笑顔で俺を見る。 「コイツは、俺がちゃんと見るから」 胸が、ぎゅっと苦しくなった。 会おうと思って、会いにいける距離じゃない。 もしかしたら、一生あえないかも知れない。 「・・・よろしくお願いします」 いっぱいいっぱいの胸で、そう返事をした。 おっちゃんは少し涙ぐみながら。 笑顔で頷く。 「あ、バスが来た」 誰かが呟いた。 その場にいたほとんどの人が、一斉に同じ方向を見る。