「・・・父さん」 背中を向けていたその人は。 俺の声に反応して、後ろを振り返った。 口に、タバコを咥えている。 そんな父さんの右手を、源五郎がぺろぺろと舐めていた。 左手で、咥えていたタバコを取る。 父さんは俺の顔を見て、笑った。 「おう、起きちょったか。郁依」 「・・・何してんのさ、こんな真夜中に」 「ん??喫煙♪」 さっきまでの口調はどこかにいってしまって。 父さんの声はいつもの、陽気な声に戻っていた。 ・・・本当に、時々、どちらが親か分からなくなる。 そんな、声だ。