オレの願いもむなしく

杏は笑顔で
南の後ろに
飛び乗った。



夕日の中を
ゆっくりと
走り出す自転車。







やっぱりオレの
予感は当たったんだ。



南はいずれ杏に
興味をもつ。





その"いずれ"が



こんなにも
早く来るなんて…。





家に帰ってからも
オレはしばらく
考えこんだ。



考え込むことしか
できねえんだ。



杏はオレのだ!



そう啖呵切れば
いいだろ。


いつものケンカの時
みてえによ。



でもできねえ。





いざとなると

オレって弱い
生き物だな…。