「ん…?
あ、南」



自転車に跨った南は

何も言わずに
あごだけくいっと
動かして
荷台をしめした。



「送ってくれるの?」

「どうせ今日
サブさんにゲーム
誘われてたし」

「じゃ、遠慮なくっ」



南はあたしが
荷台に座ったことを
確認すると
ゆっくりと走り出した。





「ねえ南ー」

「なに」

「あんた意外と
いいやつだねー」

「お前は見た目以上に
変なやつだな」

「なっ…」



顔を上げると
南の穏やかな
横顔が見えた。





…やっぱ意外。







あたしは気づかなかった。



星也さんが
この光景を
見ていたなんて。