静かに、でもはっきりと
屋上に響いた低い声で
あたしたちは
ピタリと動きを止めた。
声の主を探すと
扉の影で誰かが
むくりと起き上がった。
「オレの眠りを
妨げるな…。
いちゃつくなら
ほかでやれよ」
「ああん?
なんでてめえに
んなこと言われなきゃ
なんねえんだよ?」
「知るか」
「てめえ…やんのかよ」
あきらかに星也さんは
攻撃体制だ。
「ちょ、ちょっと
星也さん!
やめてよ、学校で
ケンカなんて…」
「杏は黙ってろ!」
「杏…?」
あたしの名前を
耳にしたとたん
不思議少年が
初めてあたしの
方を見た。