その夜、晴子は夢で沢山のてるてる坊主を作っていた。

 雨谷と二人で。


「…晴子ちゃんの作るてるてる坊主って、シュール…」

「う、煩い。…どうせ、下手だよ」

「誉めてるのに…。何か、効きそう!」

「…完璧に魔除け扱いだよね、ソレ」

「えぇ?本当に誉めてるんだけど…」

 雨谷はクスクスと笑いながら、晴子が作ったてるてる坊主らしき物体をユラユラと顔の上で揺らしている。

「夢が醒めても、此が手元にあればなー…」

 雨谷は残念そうに息を吐いて、またてるてる坊主作りに取り掛かる。

「…こんなにあったら邪魔だよ…」

 晴子は呆れ半分に項垂れながら、丸く膨らんだ布にペンでてるてる坊主の目を書いていく。

「ほら。晴子ちゃん、見て、見て!凄くない?」

 背を向けて何をしているかと思えば、雨谷は、いくつかのてるてる坊主の紐をくくり合わせていた。

「…ちょっと気持ち悪い…」

 今のは、意地悪でも皮肉でも嫌味でもない。

 晴子の本気の感想だ。

 だらりと垂れるてるてる坊主がひしめきあっている様子は、白いモップのお化けみたいだった。