《一日目》


「あー!」

「降ったね」

 最早、半泣きの状態で雨谷は窓の外を見る。

 そんな必死になる程の理由が、晴子には分からない。

 外は、まるで空から水の入った大きなバケツをひっくり返したみたいな土砂降りだった。

 最近、降ってなかったから、その反動だろう、と晴子は思った。

「あーぁ。てるてる坊主とか、作って来ようかな…」

 頬を膨らませて肘をつく雨谷の仕草は、いかにも子供のそれだ。

「いいんじゃない?」

「ちゃんと、飾ってくれる?晴子ちゃん…」

「掃除の邪魔になったら捨てる」

「ヒドイ…」

 晴子は、だいぶ雨谷の扱いに慣れていた。

 雨谷の拗ねてみせる態度は折角整った顔も台無しだ。

 黙っていたら、満更でもないのだが。

「どうせなら千羽鶴みたいなの作れば楽しいかもね」

 晴子は、冗談で言った。

 雨谷は相変わらず朗らかな笑顔で「それ、イイね」と返した。