けれども、お顔の赤々と火照らせられるのは、どうにもお隠しになれずにいらっしゃいますので、藤霞女房も、このお若い方の忍ぶ恋を思うにつけて、おかわいそうになるのでございますが、女の身なれば、と息をつきまして、このように申し上げるのでした。

「姫様。そのように、お隠しごとのできぬ質では、宮中ではご苦労なさいます。一の君様のことは、どうか、これきりお忘れになってくださいまし」