「リカ~、俺のスパイクどこにしまったっけ?」


あれから時は過ぎ、あたしたちは高校生になった。

あたしとアキは同じ高校に入り、あたしはマネージャー、アキは再びグラウンドに立っている。


「もう、そのくらい自分でやってよ!あたしはアキだけのマネージャーじゃないんだから」

「はいはい、そんな怒るなって」

そう言って彼は左手であたしのほほを軽くつねった。


変わることがない、彼の無邪気さ。変わったのはアキの姿。右の肩はあの試合で故障し、もう野球はできないと医者に宣告をされた。

それでもアキは野球をやめなかったんだ。


グローブは右手にはめられ、帽子は前よりも浅くかぶり、左手にボールを握っている。そんな彼の姿は誇らしくもあり、また、切なくもあった。


「アキ、投げてみろ」