「俺は、まだ父親になる覚悟もないし、まだ信じられないってのにな。女はすげーな。」

僕は、自分だったらどうするかと考えた。

ユキとの子供なら今すぐでも大喜びするだろうけど、もう好きではなくなった人との子供ができたとなると・・・。

これからの人生を全てその子供に捧げる程の覚悟ができるだろうか。

まだ社会人でもない、経済的に自立もできていない今の僕らに何ができるか。

ドラマで見るような、金で解決・・という方法すら僕らにはないのだ。

だけど、自分の子供なんだ。


実感はなくても、自分の子供なんだ。


一度は愛した相手との子供を、僕はきっと抱きたいと思うだろう。

その子の成長をそばで見ていたいという気持ちが生まれてくるだろう。

シンはユミちゃんが好きで、このようなことがなければおそらく2人は付き合っていただろう。

シンとユミちゃんの未来と、シンと生まれてくる赤ちゃんと母親との未来。


どちらがシンにとって大事なのか、どっちが幸せかなんてわからない。

でも、赤ちゃんにとってはシンはたった一人のパパなんだ。

シンが父親として、彼女と結婚することが赤ちゃんにとっては幸せなのだろう。

そうとも言えないのかもしれない。

愛し合っていない両親の元で育つことは、子供にとって幸せとは言えない。

シンの決断は、まだまだ先になりそうだが、僕にできることは話を聞くことだけ。


「俺、お前にだけ本心言うと、その彼女とは結婚はしたくない。子供の父親になることはできても、結婚はできない。でも、それって勝手だよな。そんな俺をユミちゃんが受け入れるはずもない。なんかさ、やっとユミちゃんと向き合おうって思った所だったから、こんなに悩むのかな。フラれるかもしんねーのにな。」


シンは、転がっているサッカーボールを蹴った。



「ナイスシュート!お前がぶち当たる初めての壁なんじゃないの?」


ボールはコロコロとゴールに向かって転がる。