ユキのいない僕の部屋は、色褪せて見える。

ユキが家に戻ってから、夜中に何度も目が覚める。

僕は一人でお見舞いに行ったが、ゆうじは検査で病室にいなかったので話すことができなかった。

ゆうじのお母さんが言った言葉が忘れられない。


「あの子は、みんなから一生分の幸せをもらったから幸せに天国へ行ける」


僕は、ゆうじのお母さんの目の奥の悲しみを感じたので黙ってうつむいていた。

心の中では、

「どうして、そんなこと言うんだよ!!」と僕は怒っていた。


信じて待つことが僕らにできる唯一のことだと思っていた。

だが、ゆうじのお母さんは、そう思わないと生きていられなかったのだろう。

治ることを信じて祈り続けて、ゆうじがいなくなってしまった時の悲しみは、お母さんには耐えられなかったのかもしれない。


あの子は今死んでしまっても幸せなんだ、と思うことでお母さんは毎日ゆうじと笑って会話することができたのかもしれない。

ゆうじは、自殺した時に体にかなりの大怪我を負っていたそうだ。

命の危険もあったほど強打した体は、少しずつ弱くなってきていたのだろうか。

はっきりした原因も病名もわからないと言われた。