水野さんは1時間もしないうちに帰ってきたが、それから5分ほどで僕らは帰った。

みずきさんの話を聞いた後で、どんな顔して話していいかわからなかった。


「え~?もう帰るの?ハルっぺ、ユキちゃんまた来てね。」


水野さんに見送られ、僕はユキと手をつないで坂道を下った。


「同じ家に帰るって幸せだね。一緒に暮らそっか?」


ユキはいつも大胆な発言で、僕をドキドキさせるんだ。


そりゃ、僕だってそれはとても望んでいることだけど、同棲するなら結婚したいと思う。

ここで、僕が「暮らそう」と言っても、結局一緒には暮らせないことはわかっていた。

僕の両親も許さないだろうし、ユキのお父さんも寂しがるだろう。


「一緒に暮らしたいのは僕も同じ。もう少し待ってろよ。」


僕は握り合う手に力を込めて、歩き続けた。

坂道を下ると、とても美しい夕焼けが僕らの前に広がっていた。


「明日から、私家に戻るけど、寂しかったらいつでも駆けつけるからね。」



どっちが男だかわからない。

僕はユキに守られ、支えられ、包まれて、ようやく笑うことができる状態だった。


みずきさんの言葉がよみがえる。


抱きしめられる安心感・・・。


抱きしめられた時に相手の心がわかる。


胸の鼓動が重なることで、安心できる。



この不安は体のぬくもりを感じないと消せない。

電話やメールでは、僕はよけい寂しくなってしまうだろう。

隣で笑って、手を握り、僕を抱きしめてくれるユキの存在が必要だった。

僕は、ユキがいないと不安に押しつぶされそうで仕方なかった。


できれば24時間ずっとそばにいて欲しかった。