ゆうじは、歌い終えると、顔を覆って泣き出した。


スポットライトがゆうじを照らすことをやめた。


大野君がゆうじのマイクを持ち、ゆっくりと前へ歩いた。


「しばらく会えなくなるけど、みんなゆうじの歌声忘れないでね。僕はこんな澄んだ声が出せないから、ゆうじが戻ってくるまではギターの練習をしておくつもりです。」



大野君は涙をこらえながら、ゆうじの代わりに話し続けた。


「僕は、ゆうじにギターを教えてもらいました。ゆうじと出会うまでは、生きる喜びや楽しみを感じることはありませんでした。ゆうじは、いつも周りの人に感謝するけど、ゆうじもたくさんの人に幸せを与えていることをゆうじはわかっていない。僕が今ここにいるのは、ゆうじのおかげ。いじめられていた僕に、強さを教えてくれたのはゆうじです。いつでも笑顔でいられるゆうじは、誰よりも強いんだって思いました。その強さで、きっと戻ってきてくれると信じています。強いからこそ、人に優しくできるんだってゆうじのそばにいて、感じています。ゆうじの歌声を聞くために、来年もここでライブをしたいです。どうか、また来年ここでこのメンバーで会えますように・・・。」


大野君の一言一言はとても心に響いて、僕も同じように感じていたとわかった。


ゆうじの優しさや笑顔は、強さからくるものだ・・・って。



弱くなんかないんだ。

いつの間にか、笑顔に戻っていたゆうじは車椅子を前に動かし、大野君の隣に並んだ。