吸血鬼と紅き石

先程とは場所を変えて。

皺も染みも何一つない真っ白なクロスが掛けられた、どこのアンティークか疑いたくなる、装飾の見事な年代物の豪奢なテーブル。

椅子も今まで使ったことのない程座り心地の良い、テーブルと対になった装飾が見事な、絹張りのもの。

白に青磁で絵画が描かれたティーポットとカップは、その繊細さに思わず溜め息が出てしまう。

勿論カップに注がれた紅茶の味も、極上。

そして目の前には行儀悪くテーブルに凭れ掛かる青年の姿。

本来なら部屋の雰囲気を台無しにしてしまう筈のその姿も不思議と溶け込んでいるのは、その美貌故か。

「まずお前…自分が吸血鬼と人間の間に出来たガキだ、ってのは知ってるか?」

いきなり本題から入るような、前触れのないその言葉に心臓が高鳴った。

突拍子もないその言葉に、思わず取り落としそうになったカップをどうにか指で支える。

「…なに、言ってるの?あたしは違うわ」

何か間違っているんじゃないの、と聞いた事もないその言葉にリイエンはきっぱりと言い返す。

「言ってねェのか、オルフェルトの野郎…」

ぼやきと共に、面倒臭げに青年が爪先で銀糸を掻く。