広い部屋の中。
ゆるやかに波打つ金糸、白磁の肌。
ベッドに少女が横たわっている。
「…う、ん…」
小さく呻き声を上げてゆっくりとその瞼が開かれて。
翡翠色の瞳がぼんやりと天井を眺める。
その目に映ったのは大きな天蓋越しの天井。
(――家の天井じゃない)
何時も寝起きしている粗末な天井ではなかった。
そう判断すると同時に微睡みの中を行き来していた意識が浮上する。
慌てて身を起こして周りを見回す。
広い部屋。
自分が寝ていた部屋の真ん中に置かれたベッドを中心に、その雰囲気に調和されるように置かれた調度品。
そのどれもが贅の限りを尽くされた、見事な物ばかりだけれども。
どこか寂しげ。
そんな印象を少女――リイエンは受けた。
「ここは…」
どこ。
掠れた声で自問するが返る答えも声も、ここにはない。
何故自分がこんな所にいるのかも分からない。
「お父、さん」
知らず口に出してハッとした。
父は。父は。
小屋の中の、凄惨な光景が脳裏に甦る。
あの朱に塗れて倒れていたのは、本当に父なのか。
否定したい気持ちとあれは間違いなく父なのだという気持ちが相反する。
ゆるやかに波打つ金糸、白磁の肌。
ベッドに少女が横たわっている。
「…う、ん…」
小さく呻き声を上げてゆっくりとその瞼が開かれて。
翡翠色の瞳がぼんやりと天井を眺める。
その目に映ったのは大きな天蓋越しの天井。
(――家の天井じゃない)
何時も寝起きしている粗末な天井ではなかった。
そう判断すると同時に微睡みの中を行き来していた意識が浮上する。
慌てて身を起こして周りを見回す。
広い部屋。
自分が寝ていた部屋の真ん中に置かれたベッドを中心に、その雰囲気に調和されるように置かれた調度品。
そのどれもが贅の限りを尽くされた、見事な物ばかりだけれども。
どこか寂しげ。
そんな印象を少女――リイエンは受けた。
「ここは…」
どこ。
掠れた声で自問するが返る答えも声も、ここにはない。
何故自分がこんな所にいるのかも分からない。
「お父、さん」
知らず口に出してハッとした。
父は。父は。
小屋の中の、凄惨な光景が脳裏に甦る。
あの朱に塗れて倒れていたのは、本当に父なのか。
否定したい気持ちとあれは間違いなく父なのだという気持ちが相反する。


