吸血鬼と紅き石

走る。

走って走って走って―――ただひたすらに走って。

足元も頭上も、どこまでも真っ白な空間。

どこをどう走ったかなんて分からない。

壁すらないから、どこまでもどこまでも続いているように思える、果てのない空間。

もしかしたら、ただ同じ場所をぐるぐると回っているだけなのかもしれない。

でも―――それでも良かった。

あの男から逃げるという、父との約束を果たす為なら。

そんなに体力のない自分の事だ、すぐに足は疲れて棒のように鈍くなるだろう。

だけど構わない。