術者を失ったにも関わらず崩壊し続ける世界に、ただ一人残された男は何も言わずにただ女のいた床を見つめたまま。

ふわ、ふわり。

大気から雪が舞い落ちるように、淡く光る小さな光がいくつか彼の肩へと降り立った。

「――あァ、お前らだったか」

先程の、この空間に掛けられた術を破るきっかけを彼に与えたのが、この小さな光だったとすぐに分かった。

チカ、チカリ、とまるで難破船が出す救難信号のように、何かを必死に訴えるように彼の肩先で光るその小さな命に彼―――レンバルトは黙って瞳を細めた。

「…大丈夫だ。アイツは必ず俺が助ける」

その光――魂魄達にそう告げるとレンバルトはその小さな光達を掌に集め、守るように己のマントの内側へとしまった。

術者を失って尚、空間は与えられた力に耐えきれずに悲鳴を上げて崩壊を続けている。

バサリ、と重たげな布が翻る音と共に、青年の姿はその場から消え、ただ静寂のみが後に残された。