吸血鬼と紅き石

だが…。

(本当に、あるのかも)

今更この目の前の青年が意味もない言葉を口にする筈がない。

“紅き石”───父が『それ』を持っていたとでも言うのか。

だが、その予想には矛盾が生じる。

吸血鬼が自分を滅ぼす力のあるものを手にするだなんて、普通に考えて有り得ない。

「その“紅き石”ってヤツは、石なんかじゃねェんだ。結論を言っちまえば、ソイツは吸血鬼と人間との間に出来た、ガキの心臓だ」

(心臓?)

レンバルトが告げた“紅き石”の正体に、リイエンは目を瞠く。

しかも吸血鬼を殺せる力を持つ、というものが愛したであろう人間との間に出来た、子供だなんて。

そんなこと、有り得るのか。