リイエンは胸の奥底から悲しみと共に、怒りが込上げるのが分かった。

「どうして…どうして父を…!」

さっきこの男は母を狙ったせいで、父に恥を掻かされたのだと言っていた。

だが、それはリイエンのなかで理由として意味をなさない。

そんなの、ただの自業自得でしかない。

己を睨むリイエンの目を、満足そうに男が見据えた。

「フフフ、そうだ。そうでなければアイツの娘など、いたぶる価値もない」

愉しげな口調そのままの表情を、リイエンは奥歯を鳴らしてギリ、と睨め付けた。

悔しいが、この男に自分が勝てるとは思えない。

レンバルトのいない今、何をすればいいのかさえ分からない。

それでも――――この男だけは許せない。