レンバルトと共に異空間を渡った時にはこんな症状は出なかったが、それは恐らくレンバルトが気を遣ってくれていたのだろう。

だがこの男には自分を気遣う理由など微塵もない。

「フン、その様子だと身体は脆弱な人間だな」

我ら眷族の血を、半ば引いておきながらと言外に、傲慢に付け足す男の声にリイエンは勢い良く顔を上げ、その顔を睨み付けた。

男の瞳がそれに応えるように、ギョロリとリイエンを見つめる。

その瞳は眩いばかりの黄金の、リイエンの愛する美しく優しい父のものであった筈なのに、今では全く異質の、それ。