吸血鬼と紅き石

青年はレンバルトと名乗った。

「さっき…お前が吸血鬼と人間との間に出来た子供だ、ってことは話したよな?」

レンバルトの確認に、リイエンは頷く。

(父が冷酷な吸血鬼だなんて思いたくないけど)

絶対に信じないと思っていたのに、信じさせられてしまった。

「あー…お前ら人間の間では『紅き石』って呼ばれてんのか。ソイツについては知ってっか?」

レンバルトの言葉に、リイエンは口を開く。

「吸血鬼を滅ぼす力のある石でしょう?」

レンバルトはリイエンの『石』という表現に眉をピクリと動かした。

「石、ねェ…。その様子だと、石について詳しくは知らねェか」

顎に手を当てて思案気なレンバルトの言葉に、リイエンは頷く。

吸血鬼を滅する力のある、と言われる“紅き石”についてはリイエンのいた村では子供には門外不出の秘密となっていた。

“紅き石”なんて、古いただの言い伝えだと思っていた。

強大な力を持つ吸血鬼に、無力な自分達人間に太刀打ち出来る術がある筈がない。

リイエンはずっと、そう思っていたのだ。