吸血鬼と紅き石

脳裏に浮かぶのは凄惨な父の、最期の姿。

父がいなくなってしまった事実を否定したいのに、すんなり納得出来てしまうのは何故だろう。

同じ気持ちの青年が、こうして傍に居てくれるからかもしれない。

まるで青年の悲しみが手に取るように素直に伝わって来るからかもしれない。

「…ねぇ、父はどうして…誰に、殺されたの?」

リイエンは一番聞きたかったことを口に出した。

あの優しい父が、誰かから恨みを買うなんて考えられない。

何故、あんな惨い殺され方をするのかが分からない。

沸き上がるのは悲しみと、怒り。


青年を真っ直ぐに見上げるリイエンの眼差しに青年は僅かに沈黙した後、決意にも溜め息にも似た息を吐き出した。

「オルフェルトの野郎に怒られそうで気は進まんが…」

これからは避けられないだろうからな、と青年が眼差しを改める。

「…分かった。話してやるが、暫くは俺から離れんじゃねェぞ」

真剣な眼差しを向けて来る青年に、リイエンはコクリと頷きを返した。