「お前にこれを渡しておく」

出立まで、あと数時間後に迫った昼過ぎ。

そう告げたレンバルトがリイエンの背後へと回り、優しい手付きで髪を退けると、その首に何かを掛けた。

シャラリ、という小さな金属音と、それから僅かな重みを感じてリイエンは己の胸元に手を伸ばす。

「え…?」

その指先が摘み上げたのは、白い、乳白色の石。

その石に繋がっているのは輝きも細工も見事な、見た目からして高額そうなチェーンだ。

根元が太く、先端につれて細くなっているその小さな石は何かを連想させた。

(こ、れは骨?いいえ、牙だわ)