(レン、バルト?)

リイエンはもう一度顔を上げて彼を見た。

あの瞳に浮かんだ、不思議な光。

もしかしなくても先程、彼が何かしたのだろうという事は直ぐに分かる。
自分も疲れていた筈なのに。

(他の奴の匂いなんかさせやがって)

彼の告げた言葉の意味は良く分からないけれども。

自分を気に掛けてくれている様子に胸が一杯になると、口元が自然と緩む。

自問自答で急いでいた心が、落ち着きで満たされるのを感じて彼の心臓の音を聞きながら、リイエンはそっと目を閉じた。