「予約していた十波です」 「はい、十波さま、ようこそいらっしゃいました。お部屋はこちらになります」 伶が平然と私の苗字を名乗ったことに、バレたらやばいんだから当り前だよなぁ、なんてぼんやり考えていた。 伶に手を引かれるまま、私は歩いていた。 …だって、泊まりだよ。 私、何も用意してきてないんですけど。 文句を言いたいのをぐっと堪え、視線だけで伶に文句を言っていると、伶が私の視線に気付いて口の端を上げた。