「ねぇ、伶…どこに行くの?」 「誰にも邪魔されないところ」 さっきからこの会話の繰り返しだった。 伶はいつものように、黒縁メガネに目深にニット帽を被っていて、少しカジュアルな服装だった。 顔が見えなくたってかっこよくて、目立つに決まっている、と思う。 …さっきまで寝癖をつけて、朝から盛っていた人と同一人物とは思えない。