「玲?」 もう一度、 好きな人の名前を呼ぶ。 彼女の声は聞こえない。 周りを見渡しても、 彼女の姿はない。 見えるのは向こうまで 続いていく川原と、 それに沿ってある 僕らが歩いて 来たはずの堤防。 じゃなかった。 川原でよくある、 小学生たちが 野球をしているのも、 堤防をおばさんと犬が 散歩しているのも、 部活終わりの中学生たちが 自転車で帰っていくのも、 さっきまで見ていた 光景と違った。 “同じ”ではなくて “似ている”だけ。 此処は僕の知っている 場所じゃない。