駄目だよ。私。 本当―― 「ごめん。」 灰二は黙っている。 すると、また私の 頭の上に手を置いた。 今度は掴むのではなくて 優しく撫でた。 「むしろありがとうだよ。 いつも心配してくれて。」 まただ。あの顔だ。 私は灰二を傷つける。 大切にすればするほど。 こうしてまた 灰二を傷つけた。 じゃなきゃ私は知らない。 灰二のこの、笑顔の 意味を私は知らない。 「なぁ、久しぶりに 一緒に帰らん?」 灰二が何か言っている。 でも聞き逃してしまった。