奈美さんは、スタッフらしき人とずっと話しこんでる。
―――緊急事態が起こったっぽいな。
しかも、何故か俺の方をジロジロ見ながら。
…なんか、嫌な予感がする。
こういう時の俺の勘って、よく当たるんだよな…。
ハラハラした気持ちになりかけた時、奈美さんがこっちに向かって走ってきた。
俺は心を落ち着かせながら、奈美さんに尋ねた。
「どうしたんですか?」
俺の問い掛けに、奈美さんは困った顔をした。
「それが、那知役の役者さんがこの施設で行方不明になってるらしくって…。
ケータイも繋がらないし…。
それでさっきプロデューサに言われたんだけど、
…依知君、出てくれない?」
…ほら、な?
俺の予感、大当りだ。
「何で、俺なんですか…」
そもそも、兄貴が駄々こねずにドラマ出ればよかったんじゃねーかよ。
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