「俺の友人がここの経営者の息子で、今日から部活の合宿で来てるんですよ」
俺が事情を説明すると、奈美さんは納得したみたいだった。
「そうなんだ。
というかこの間那知の家に行ったら、依知君出て行ったとか言われちゃって…。
びっくりしたんだよ?」
奈美さんは笑顔で俺に告げた。
…なんだよ、出て行ったって。
まあ、本当のことだけどな。
でも、兄貴の言い方だったら、俺が家出したみたいだな。
俺は呑気にそんなことを考えていると、突然奈美さんが悪戯っ子のように呟き出した。
「初恋の女の子の家で暮らしてるんだって?」
「……まぁ…」
…兄貴のやつ、言いやがったな。
ちなみに、兄貴は俺が光里のことを好きというのを知っている。
俺は照れ隠しのつもりで奈美さんに話し掛けた。
「というか、奈美さんは何でここにいるんすか?」
俺がそう聞くと、奈美さんはいきなり顔が赤くなった。
…俺、そんなまずい質問しました?
.

