俺は少しムスッとしながらも前を向く。
ぶつかって来た人は、俺の方を見ずにビクビクしながら謝ってきた。
「す…すいませんでした……」
「…はい」
…そんなに俺って怖いのか!?
少しショックを受けていると、何を思ったのか女の人は俺の方をまじまじを見てきた。
そして、俺に一言。
「…依知君??」
…は?
何で俺の名前を知ってんだよ!?
俺は戸惑いながらも女の人をジーっと見る。
その瞬間、俺はその正体を思い出した。
「…奈美さん?」
「そうよ、久しぶりね」
―――市原 奈美。
日本を代表する若手大女優。
しかも…俺の兄貴の婚約者。
俺も、兄貴から紹介されたときはさすがにびびった。
あの兄貴がいきなり大女優と結婚するって言い出したから。
そんなこんなで、俺と奈美さんは顔見知りだ。
「こんなところで会うなんて奇遇だね。
依知君はこんなところで何してるの?
しかも、ここハワイだし…」
奈美さんは俺がいることに驚いた様子だった。
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