ハアハアと荒い息遣いで、全身に汗をかいているいっちゃん。
…こんな必死な姿のいっちゃん、見たことがなかった。
「依知君、この子だよね?
今、依知君が探しているのは」
女の人がいっちゃんに笑顔で問い掛けた。
いっちゃんは複雑そうな表情を浮かべる。
「…そうだけど。
なんでここにいるんだ?
もう帰国したんじゃなかったのかよ、奈美さん」
―――「奈美さん」
この言葉があたしの頭をぐるぐる回る。
この親しそうな感じだけで、二人の関係性が浮き彫りになっている気がする。
―――「依知君」
―――「奈美さん」
この呼び合い方が、あたしの心をもっと複雑にさせる。
やっぱり、この二人には何かがある。
あたしは直感的にそう感じた。
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