なかなか事態を読み込めないあたしの脳みそに腹が立ちながらも、あたしは女の人に詰め寄る。



「でも、いっちゃんとあなた、キスしてたじゃないですか!!」



…この出来事は動かぬ証拠。


確かにキスしてた。

あたしはその現場を見てしまったんだから。


否定できるはずがないよ。



あたしの喜怒哀楽ぶりを見て、女の人は笑いながらも手を横に振った。



「…キス?

あれは、キスなんかしてないですよ?


キスする「ふり」なんです」



…キスする、ふり?



「ど…どういうことですか?」



あたしは思わず女の人に尋ねる。


というか、あたしが勝手に勘違いして、勝手に突っ掛かって、勝手に失恋してたってこと?


女の人にも迷惑かけて、あたし最悪じゃん!



「キスするふりをした理由は、依知君の言葉で聞いてあげて?」



女の人が指差す先には…息を切らしたいっちゃんがいた。




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