坂口くんは、あたしより一つ年下の一年生。
でも、同じサッカー部とはいえ、一度も話したことはなかった。
「今度からは覚えておいてくださいよ?」
「ごめんね…!!」
あたしは坂口くんにごめんねのポーズを取る。
そして、早く部屋に戻ろうと足を動かそうとしたその時だった。
坂口くんは、あたしの腕をグッと掴んだ。
その顔は…一瞬だけ恐ろしい形相をしていた。
「さ…坂口くん…?」
「光里さんは今からどこ行くんですか?」
何事もなかったかのように、笑顔に戻った坂口くん。
あたしの…見間違いだったのかな。
「あたしは今から服を取りに、別荘に戻ろうかと思って」
「そうなんですか?
俺も一緒に行っていいですか?」
「うん、いいけど…」
本当は少し不安だったけど、あたしは坂口君と一緒に別荘に戻ることにした。
…さっきの表情は何だったの?
その答えは、もうすぐそこまで来ていた―――
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